HockeyStackとは

HockeyStackは、B2B企業のマーケティング接点とセールス活動をひとつのデータ基盤に統合し、ファーストタッチから受注までのバイヤージャーニーを可視化するアトリビューション製品だ。

Cookieに依存しない計測で匿名の訪問者まで追跡し、CRM・広告プラットフォーム・データウェアハウスのデータを双方向に同期する。

分析はAIエージェントのOdinとNovaが担い、レポート生成からアカウントスコアリングまでを製品内で完結させる。出典

ストーリー

創業から成功に至るまでの道のり。

大学を1学期でやめた3人

HockeyStackをつくったのは、トルコ出身のBuğra Gündüz、Arda Bulut、Emir Atliの3人だ。

3人はそろって米国の大学に入学しながら、最初の学期で中退している。

Buğra GündüzはY Combinatorの創業者プロフィールで「We're Arda, Buğra, and Emir. We came from Turkey & dropped out of our first semester of college in the US to build HockeyStack.」と述べている。出典

誤った指標を最適化していた時代

創業は2022年。

当時のB2BのGTMチームは、どのタッチポイントが実際に売上を生んだのかを推測しながら予算を配分していた。

公式のAboutページは、データが断片化しアトリビューションが不完全だったために、チームが「本当は重要でない指標」を最適化していたと説明している。出典

HockeyStackが最初に解こうとしたのは、フォームを送っていない匿名の訪問者をジャーニーに載せることだった。

CRMには商談の記録しか残らず、その手前の検討は消えてしまう。

Cookieに依存しない計測を前面に出したのは、この空白を埋めるためだ。出典

YC S23からSeries Aへ

2023年夏、3人はY CombinatorのSummer 2023バッチに参加する。出典

2025年10月29日、Bessemer Venture Partnersがリードする$20MのSeries Aを発表した。

発表記事のなかでEmir Atliは、YCを卒業した時点で直近バッチのなかでも成長の速いスタートアップのひとつだったこと、前年にレベニューを4.5倍に伸ばしたことを挙げている。出典

同じ記事には、顧客がHockeyStack上で管理しているキャンペーン支出が$20Bを超えるという記述もある。出典

AIエージェントで「次の一手」へ

調達と同時に投入されたのが、AIアナリストのOdinと、アカウントスコアリングのNovaだ。

数字を読む作業をAIに渡し、人間には意思決定を残すという役割分担になっている。出典

現在のAboutページは、200社以上のB2B顧客、6か月ごとに2倍のレベニュー、60TBの追跡データという数字を掲げる。出典

アトリビューションの製品は、モデルの正しさを競う段階から、次の行動を提案する段階へ移りつつある。

HockeyStackの3人は、その転換点に自分たちのプロダクトを置こうとしている。

独自分析

PMF (プロダクトマーケットフィット)

HockeyStackが刺さるのは、B2Bのマーケティング予算を「どの接点がパイプラインを生んだか」で説明する必要があるチームだ。

CRMの最終タッチだけを見ていると、商談前に十数回あった匿名の接触が見えず、予算配分の議論が感覚に戻ってしまう。

公式のAboutページは、断片化したデータと不完全なアトリビューションのせいでGTMチームが誤った指標を最適化していたことが創業の出発点だったと説明している。出典

この痛みは、広告費の削減と売上目標の同時達成という形で顕在化する。

ActiveCampaignはHockeyStack導入後に広告支出を半分にしながら月次レベニュー目標を達成したと公式のケーススタディで紹介されている。出典

示唆は単純だ。

アトリビューション製品の価値は「レポートがきれい」ではなく、予算会議で数字を防御できるかどうかで決まる。

参入障壁 (Moat)

Atlasと呼ぶデータ基盤と、ClickHouse上で動くリアルタイム集計が実質的な参入障壁になっている。

毎秒500万行を超える取り込みと1日あたり4320億行の処理は、後発が短期間で再現できる規模ではない。出典

ネットワーク効果

ネットワーク効果は弱い。

顧客が増えても他の顧客のデータが価値を生む構造ではなく、強みはデータ量と分析モデルの精度に閉じている。

一方で、業界横断のベンチマークを蓄積して公開できる点は、情報面での緩やかな優位になる。出典

ターゲット

B2B SaaSのマーケティング責任者、デマンドジェネレーション責任者、RevOpsが中心。

広告・イベント・コンテンツを横断して予算を配分し、商談化までの長いジャーニーを説明する必要がある、従業員数百人規模以上の企業が多い。出典

成功要因

第一に、匿名接点まで含めたデータ統合を製品の中心に置いたこと。

Cookieを使わない計測で、フォーム未入力の接点もジャーニーに載せている。出典

第二に、コンテンツとベンチマークレポートによる需要創出。

HockeyStack Labsでは LinkedIn広告のベンチマークなど、比較検討の入口になる調査を自社で公開している。出典

第三に、BizibleやDreamdataからの乗り換え事例を丁寧に言語化した点だ。出典

失敗・課題

公開価格がなく、導入判断にデモ依頼が必須な点は、セルフサーブで試したい中小チームを遠ざける。

データ基盤の導入にはCRMや広告アカウントの接続作業が必要で、初期設定の負荷は小さくない。

またアトリビューションはモデル選択によって結論が変わるため、指標の定義を社内で合意できない組織では、ツールを入れても議論が収束しにくい。

CRMベンダーが標準機能として同種の分析を強化した場合、乗り換えの動機が薄れるリスクもある。

グロース戦略

成長の主軸はコンテンツと事例の積み上げだ。

ブログ、Labsのベンチマーク、顧客の事例記事を継続的に出し、比較検討の初期段階でHockeyStackの名前が候補に入るようにしている。出典

次に、Series Aで得た資金をAIエージェントのOdinとNovaへ投下し、レポーティングからアクション提案へ価値の重心を移そうとしている。出典

トレードオフは、エンタープライズ向けの導入支援に人員を割くほど、セルフサーブの獲得効率は下がることだ。

主要チャネル: content_seo, benchmark_reports, linkedin, case_studies, partnerships

学べること

分析プロダクトは、指標の定義そのものを製品に取り込むと強い。

HockeyStackは「どのモデルで見るか」を顧客に選ばせ、複数モデルを並べて比較できるようにした。

判断を押しつけず、判断材料を揃える設計にしたことが、マーケターの信頼につながっている。出典

日本で展開するなら

日本企業では、広告代理店経由のレポートと社内BIが分断されがちで、HockeyStackが解こうとしている問題はそのまま当てはまる。

ただし日本では指名検索と商談化の距離が短く、商習慣として代理店への説明責任が重い。

導入支援と日本語のダッシュボード テンプレートを併せて提供する形が現実的だろう。

主な競合

Timeline

創業から成功に至る道のり。転機ごとの収益・調達・バリュエーション (出典あり) も併記します。

  1. Buğra Gündüz、Arda Bulut、Emir Atliの3人がHockeyStackを創業。3人とも米国の大学を1学期で中退している出典

  2. ローンチ出典

  3. Y Combinator Summer 2023バッチに参加出典

    • YC S23
    • Y Combinator
  4. B2Bのレベニューアトリビューション領域で顧客基盤を拡大し、Outreach、RingCentral、Tipalti、Diceなどが導入出典

  5. Bessemer Venture Partnersがリードする$20MのSeries Aを発表。前年比でレベニューを4.5倍に伸ばし、AIエージェントOdinとNovaを投入出典

    • 調達 $20,000,000
    • Series A
    • Bessemer Venture Partners
  6. パイプライン予測のテンプレート集Blueprintsを公開し、Account IntelligenceとOdin中心のプロダクト構成へ移行出典

ポジショニング

分析で挙げた競合プロダクトとの相対位置を示しています。

エンタープライズ向けの高価格帯で、アトリビューションからアカウントインテリジェンスまで範囲を広げる位置。

参考リンク

関連プロダクト