Storyblokとは

Storyblokは、開発者とマーケターの両方が同じコンテンツ基盤で作業できることを狙ったヘッドレスCMSだ。

オーストリアで2人のエンジニアが2017年に始め、2022年5月に$47MのSeries Bを調達した。出典

ストーリー

創業から成功に至るまでの道のり。

オーストリアのリンツで、デジタルエージェンシーに所属していたDominik AngererとAlexander Feiglstorferは、受託開発のたびに同じ壁にぶつかっていた。

クライアントのコンテンツ管理が遅く、開発者とマーケターのどちらかが必ず待たされる。

2017年、2人はその不満を自分たちの製品に変えることにした。出典

エージェンシーの中から出たプロトタイプ

2人が最初に作ったのは、コンテンツを部品のように組み合わせるヘッドレスCMSのプロトタイプだった。

完成した製品を売り込むのではなく、自分たちが日々困っていた問題を解く道具として育てた点が、後の「開発者とマーケターの両方に使えるCMS」という立ち位置につながっている。出典

2人から171人へ

立ち上げから数年は小さなチームで開発を続けた。

転機は2021年2月のHV Capital主導のSeries Aで、3VCとfirstminute capitalも加わった。

調達後は採用が加速し、2022年5月のSeries B発表時点でチームは2019年の2人から38か国171人へ増えている。出典

$47Mを集めた2022年

2022年5月、Mubadala CapitalとHV Capitalが共同でリードする$47MのSeries Bを発表した。

当時、顧客プロジェクトは130か国12万件、開発者とマーケター7.4万人がStoryblok上でコンテンツを扱っていた。

資金は新しいCMSの開発とチーム拡大に充てるとしている。出典

「私たちのミッションは、コンテンツを一度整理して、あらゆる場所へ配信できるようにすることです」と、Dominik AngererはSeries Bの発表記事で述べている。出典

企業向けへの軸足

2025年になると成長の主戦場はエンタープライズへ移った。

10月の初の自社カンファレンスJoyConfでは、ワークフロー自動化のFlowMotionと、コンテンツに意味を付与するベクターデータ層Strataを発表。

12月には企業顧客が10か月で40%増えて500社を超えたと公表し、KongやAWSで要職を務めたJoe VranicarをCROに迎えた。出典

「市場はブランドが自らのコンテンツをもっとコントロールしたいという方向に加速しています」。AngererはCRO就任の発表でそう語り、エンタープライズAPIとAIの経験を持つ人材を成長の次の段階に据えると説明した。出典

AI時代の課題を定義しにいく

2026年1月にはAWSと複数年のStrategic Collaboration Agreementを締結し、共同のgo-to-marketを進めると発表した。出典

同年8月にはFT Longitudeと組み、古くて構造化されていないコンテンツが企業に与える損失を「コンテンツ負債」として定量化した。

AI検索が誤った情報を要約してしまうリスクを、CMSの購入理由に置き換えにいったかたちだ。出典

2人のエージェンシー開発者が抱えた不便さは、9年をかけて企業のコンテンツ基盤を選ぶ基準そのものを書き換える事業になった。

独自分析

PMF (プロダクトマーケットフィット)

痛みが最も強いのは、開発者とマーケターが別々の道具でコンテンツを触っている中堅〜大企業だ。

開発者はAPIと構造化データを求めてヘッドレスCMSを選ぶが、その結果マーケターが管理画面から締め出される。

StoryblokはビジュアルエディタとAPIを同じ製品に載せ、この分断を埋める。出典

規模の裏付けもある。

2022年5月の時点で13万件のプロジェクトと7.4万人の開発者・マーケターが使っていた。出典

2025年12月には企業顧客が10か月で40%増えて500社を超え、AI時代のコンテンツ管理を掲げる導入がエンタープライズで伸びている。出典

参入障壁 (Moat)

参入障壁の中心は、コンテンツブロックというデータモデルと、ビジュアルエディタの操作感を両立させた実装にある。

構造化データを保ったままマーケターが編集できる状態は、単純なAPI CMSでは再現しにくい。出典

加えて、パートナーとAWSの協業、IDC MarketScapeでのLeader選定といった対外的な評価が、エンタープライズの選定時に効く。出典

ネットワーク効果

ネットワーク効果は中程度だ。

CMSそのものは顧客ごとに独立して動くため、ユーザーが増えるほど直接的に製品価値が上がる構造は弱い。出典

一方で、パートナーや代理店、フロントエンドのスターターキット、コミュニティイベントが増えるほど「導入できる人材」が増え、採用と導入の摩擦が下がる間接的な効果は働く。

JoyConfやパートナー表彰はこの層を厚くする施策と位置づけられる。出典

ターゲット

主対象は、複数のブランドや言語を持つ中堅〜大企業のWeb・コンテンツチームだ。

開発者はAPIとフロントエンドの自由度を、マーケターはビジュアル編集と公開スピードを求める。

Oatly、TomTom、Virgin Media O2のような消費財・モビリティ企業が代表例として挙げられている。出典

向かないのは、1人で運営する小規模ブログや、WordPressのテンプレートで完結するサイトだ。

開発リソースがなくヘッドレス構成を組めないチームには、構造化の利点より設定コストが上回る。出典

成功要因

1つ目は、開発者向けAPIとマーケター向けビジュアルエディタを1製品に統合したこと。

競合の多くがどちらかに寄る中で、両職種を同じ基盤に座らせた。出典

2つ目は、リモート前提の採用で組織を急拡大したこと。

2022年時点で38か国171人を抱え、グローバル顧客を同じ速度で扱える体制を作った。出典

3つ目は、調査レポートと自社イベントを軸にした市場教育だ。

コンテンツ負債の定量調査やJoyConfは、単なる製品広告ではなく問題提起として機能している。出典

失敗・課題

ARRや利益率は非公開で、Series B以降の収益性は外から検証できない。

累計調達額も公式には公表されていない。出典

競合は多い。

Contentful、Sanity、Hygraph、Prismicなど同じ「ヘッドレスCMS」を掲げる製品が並び、価格や機能での差別化が常に問われる。出典

エンタープライズ移行は導入コストと社内調整が重く、契約後の定着まで時間がかかる。

加えて、エンタープライズ比率を上げるほど組織の拡大速度がリスクになる。

Series B発表時には「年内に330人へ」と目標を掲げており、急拡大が文化や品質に与える影響は不確実だ。出典

コンテンツ負債の調査は自社が委託した研究であり、課題の大きさを自社の都合よく提示している可能性は否定できない。出典

グロース戦略

獲得は3層に分かれている。

1つは無料のStarterから入るセルフサーブで、開発者が個人プロジェクトで試す導線だ。出典

2つ目はコンテンツマーケティングで、コンテンツ負債の調査レポートや導入事例によって「CMSを買い替える理由」を先に作る。出典

3つ目はパートナーとクラウドの協業だ。

代理店経由の導入とAWSとの共同go-to-marketでエンタープライズの商談に入る。出典

トレードオフは、セルフサーブの無料枠とエンタープライズの高単価を同じ製品で扱う難しさにある。

機能をエンタープライズに寄せるほど、個人開発者向けの軽さが損なわれる。出典

主要チャネル: content_marketing, research_reports, community_events, partner_ecosystem, cloud_marketplace

学べること

受託や代理店の現場で感じた不便さは、そのまま製品の仕様に変換できる。

Storyblokは「なぜコンテンツ管理は遅いのか」という素朴な疑問を出発点にしている。出典

もう1つは、買い手が誰かではなく「買い手が二人いる」前提で設計すること。

開発者とマーケターのどちらかを犠牲にしない製品は、導入時の社内合意を作りやすい。出典

市場教育に投資する判断も参考になる。

課題を定量化する調査は、製品の機能差では伝わらない問題の大きさを先に共有する手段になる。出典

日本で展開するなら

日本では、レガシーCMSの更改と多言語・多ブランド対応が同時に来る企業に刺さりやすい。

制作会社やSIerをパートナーに据えた導入モデルは、Storyblokのパートナー戦略と相性がいい。出典

一方で、日本語の管理画面や商習慣に合わせた運用支援は必須になる。

AI検索経由の流入が増えるほど「古い情報が要約される」リスクは日本の企業にも共通する論点だ。出典

主な競合

Timeline

創業から成功に至る道のり。転機ごとの収益・調達・バリュエーション (出典あり) も併記します。

  1. ローンチ出典

  2. Dominik AngererとAlexander FeiglstorferがオーストリアでStoryblokを創業。エージェンシー時代に感じたコンテンツ管理の不便さを、ヘッドレスCMSのプロトタイプとして製品化した。出典

  3. HV Capital主導のSeries Aを実施。3VCとfirstminute capitalも参加した。出典

    • Series A
    • HV Capital, 3VC, firstminute capital
  4. Mubadala CapitalとHV Capitalが共同リードする$47MのSeries Bを発表。発表時点でチームは2019年の2人から38か国171人に拡大し、顧客プロジェクトは130か国12万件、開発者とマーケター7.4万人が利用していた。出典

    • 調達 $47,000,000
    • ユーザー 74,000
    • Series B
    • Mubadala Capital, HV Capital, 3VC, firstminute capital
  5. 初の自社カンファレンスJoyConfを開催。コンテンツワークフロー自動化のFlowMotionと、ベクターデータ層Strataを発表した。出典

  6. JoyConf New Yorkで2025 Partner Awardsを発表し、9社のパートナーを表彰した。出典

  7. 企業顧客が10か月で40%増えて500社を超えたと発表。Joe VranicarがCROに就任し、IDC MarketScapeのAI対応ヘッドレスCMS評価でLeaderに選定された。出典

    • ユーザー 500
  8. Amazon Web Servicesと複数年のStrategic Collaboration Agreement(SCA)を締結し、共同のgo-to-marketを進めることを発表した。出典

  9. FT Longitudeと共同でコンテンツ負債の調査を発表。調査企業の平均負債額や回収計画を含む「Content Debt Recovery Plan」を提示した。出典

  10. 収益スナップショット出典

ポジショニング

分析で挙げた競合プロダクトとの相対位置を示しています。

低価格セルフサーブのStarterを持ちながら、Premium/Eliteのカスタム見積もりでエンタープライズまで届く。単一用途ではなくWeb・アプリ・AI検索まで広げる汎用寄りのポジション。

参考リンク

関連プロダクト