Muralとは

Muralは、チームが同じデジタルキャンバスに集まり、付箋や図解、テンプレート、進行役向けの機能を使って考えを可視化し、合意形成まで進めるビジュアルコラボレーション基盤です。

2011年にMariano Suarez-Battanらが創業し、2021年7月には$50MのシリーズCを$2B超の評価額で調達、累計調達額は約$200Mに達しました。出典

ストーリー

創業から成功に至るまでの道のり。

Mariano Suarez-Battanは2011年、離れた場所にいるチームが同じ図の上で考えを並べられるようにする道具としてMuralを作り始めた。

当時のビジュアルコラボレーションは、同じ部屋のホワイトボードと付箋が前提だった。

Muralは、その体験をソフトウェアのキャンバスへ移し替えようとした。

創業から数年は小さな資本で運営した。

2016年7月、IDEOのStartup in Residenceを修了したタイミングで$1.35Mのシード資金を調達し、IBMとの協業を獲得する。出典

IDEOは製品だけでなく、初期の大口顧客との接続まで支援した。

この経験についてSuarez-Battanは「このレジデンシーは、Muralが製品をリアルタイムに更新することを可能にした」と振り返っている。出典

2018年6月にはForrester ResearchがIBMへの導入効果を分析し、495%のROIと6か月未満の回収期間を算出した。出典

「会議が良くなる」という定性的な価値しか持ちにくい製品にとって、この試算は企業の予算を取りにいくための武器になった。

転機は2020年だった。

1月にRadian Capital主導で$23MのシリーズAを調達し、当時すでにFortune 100の40%が利用していると説明した。出典

半年後の8月にはInsight Partners主導で$118MのシリーズBを実行。

第2四半期だけで月間アクティブユーザーが100万人を超え、売上は前年比3倍に伸びた。出典

Suarez-Battanは当時こう語っている。

「私たちはMuralを、どこからでもチームワークを可能にするために創業した。11年後、数千のチームと数百万のメンバーが、一緒に働き方が結果を左右すると学んできた」。出典

2021年7月、$50MのシリーズCを$2B超の評価額で調達し、累計調達額は約$200Mに達した。出典

同年8月には30日トライアルを廃止し、5枚のmuralと無制限メンバーを無償で使えるFreeプランを導入して、個人からの裾野を広げた。出典

成長の次に来たのは、経営の入れ替えと手法の買収だった。

2022年3月にLUMA Instituteを買収し、可視化ツールにワークショップの型とトレーニングを接続した。出典

同年5月にISO 27001、10月にFedRAMP In Processを取得して政府・金融・医療といった規制産業へ踏み込み、12月には共同創業者のSuarez-BattanがCEOを退き、取締役会議長としてDavid Bagaを支える体制へ移った。出典

2023年11月、MuralはMicrosoft 365 Copilotとの連携を発表し、AIをキャンバスの中に取り込んだ。出典

2024年7月にLeigh-Margaret StullがCEO、2025年2月にElaina O'MahoneyがCPO、同年9月にOmar AyubがCTOに就任し、AI前提の経営体制を整えた。出典

2025年5月にはGo-to-Marketチームの85%が定常的な認識齟齬を抱えているという調査を公表し、会議の道具から経営課題の解決へと訴求を移している。出典

独自分析

PMF (プロダクトマーケットフィット)

Muralが刺さるのは、会議やワークショップの「発散と収束」を物理的なホワイトボードなしで回したいチームです。

リモートや分散拠点の参加者は、口頭の議論だけでは論点の位置関係を共有できません。

Muralは付箋・図・テンプレートを一枚のキャンバスに並べ、ファシリテーターが進行を制御できるようにしました。

IBMではデザイン思考の展開に使われ、月間17,000人が利用、Forresterは495%のROIと回収期間6か月未満を試算しています。出典

導入効果が「会議の質」という曖昧な領域でも、削減できた移動・工数として金額化できた点が、企業購買の意思決定を後押ししました。出典

参入障壁 (Moat)

障壁はブランドとエコシステムです。

Microsoft Teams、Microsoft 365 Copilot、Jira、Google Workspace、Okta、Microsoft Entra IDなどへの作り込まれた連携と、Fortune 100の半数以上という導入実績が、乗り換えコストを作っています。出典

ネットワーク効果

ネットワーク効果は中程度です。

同じキャンバスを複数チームが使うほどテンプレートと社内の作法が共有資産になりますが、招待された一度きりの参加者はその価値を体験しにくく、効果は組織内に限定されます。出典

ターゲット

主な利用者は、プロダクト、コンサルティング、デザイン、営業、変革推進のリードです。

特に、複数拠点のメンバーを巻き込んで戦略策定や設計ワークショップを回し、その結果をJiraやTeamsなど既存ツールへ戻す必要がある大企業のチームが中心です。出典

成功要因

第一に、エンタープライズの要求水準に早く合わせたことです。

2020年時点でFortune 100の40%が顧客で、2022年にはISO 27001とFedRAMP In Processを取得しています。出典

第二に、ツールだけでなくワークショップの型を一緒に売ったことです。

2022年にLUMA Instituteを買収し、手法とトレーニングを製品に接続しました。出典

第三に、無料プランで個人利用から入れる導線を作ったことです。出典

失敗・課題

無料のホワイトボードツールとの機能差が縮まりやすく、価格だけを見た比較に晒されます。

実際、MuralはシリーズCで$2B超の評価を受けましたが、arrは非公開のままで、成長率の継続を示す一次情報は乏しい状態です。出典

また2022年と2024年にCEOが交代しており、創業者主導から経営者主導への移行期に戦略の一貫性を保てるかは不確実です。出典

グロース戦略

成長は、無料プランで個人と小チームを取り込み、SSOやガバナンスが必要になった時点でBusinessとEnterpriseへ引き上げる階段構造です。

2020年までは$2M弱の調達でキャッシュフロー黒字の四半期を出しながら、2020年に$23M、$118M、2021年に$50Mと資本を入れ、エンタープライズ向けの機能と販売体制を一気に積み上げました。出典

近年はAIとLUMAの手法を組み合わせ、Go-to-Marketチームの認識齟齬という経営課題へ軸足を移しています。出典

主要チャネル: content, partnerships, community, events, product_led_free_plan

学べること

機能で差が付きにくい領域でも、顧客の成果を金額で示せれば企業向けの価格を通せます。

MuralはForresterのROI試算を早期に取得し、単なる便利ツールではなく投資案件として売る道を作りました。出典

加えて、ツール単体ではなく手法と人材育成まで含めて提供すると、置き換えの検討対象になりにくくなります。出典

日本で展開するなら

日本では、大企業の課長層が主催する定例の部門横断会議が主戦場になります。

議事録とタスク管理はすでにグループウェアがあるため、置き換えではなく「会議の前に論点を一枚に並べる」用途で入れると定着しやすいはずです。

LUMA型の認定トレーニングを日本のコンサルや研修会社と組み、ファシリテーター人材の育成とセットで売る形が現実的だと考えます。

主な競合

  • Miro
  • FigJam
  • Lucidspark
  • Microsoft Whiteboard
  • Canva Whiteboards

Timeline

創業から成功に至る道のり。転機ごとの収益・調達・バリュエーション (出典あり) も併記します。

  1. ローンチ出典

  2. Mariano Suarez-Battanらが、離れたチームが同じ図の上で考えるためのビジュアルコラボレーションツールとしてMuralを創業した。出典

  3. $1.35Mのシード資金を調達。IDEOのStartup in Residenceを修了しIBMとの協業を獲得、IBMでは月間17,000人がMuralを利用した。出典

    • 調達 $1,350,000
    • Seed
    • Alta Ventures, NXTP Labs, Intel Capital, Collaborative Fund
  4. Forrester ResearchがIBMへの導入効果を495%のROI、回収期間6か月未満と試算した。出典

  5. Radian Capital主導で$23MのシリーズAを調達。当時すでにFortune 100の40%が顧客だった。出典

    • 調達 $23,000,000
    • Series A
    • Radian Capital, Gradient Ventures, Endeavor Catalyst
  6. Insight Partners主導で$118MのシリーズBを調達。第2四半期だけで月間アクティブユーザーが100万人を超え、売上は前年比3倍だった。出典

    • 調達 $118,000,000
    • Series B
    • Insight Partners, Tiger Global, Slack Fund, World Innovation Lab, Gradient Ventures
  7. $50MのシリーズCを$2B超の評価額で調達。累計調達額は約$200Mとなった。出典

    • 調達 $50,000,000
    • バリュエーション $2,000,000,000
    • Series C
    • Insight Partners, Tiger Global
  8. 30日トライアルを廃止し、5枚のmuralと無制限メンバー、Facilitation Superpowersを含むMural Freeプランを開始した。出典

  9. LUMA Instituteを買収し、Collaborative Intelligence Systemを発表。非効率なチームコラボレーションのコストを$542Bと提示した。出典

  10. ISO/IEC 27001:2013認証を取得した。出典

  11. Forbes 2022 Cloud 100に選出された。出典

  12. 米国退役軍人省のスポンサーシップでFedRAMPのIn Process指定を取得した。出典

  13. 共同創業者のMariano Suarez-BattanがCEOを退いて取締役会議長となり、David BagaがCEOに就任した。出典

  14. Microsoft 365 Copilotとの連携を発表。Copilot一般提供初日の統合の一つとして、AIを使った可視化ワークを提供した。出典

  15. Leigh-Margaret StullがCEOに就任した。出典

  16. Elaina O'MahoneyがCPOに就任し、AIを含むプロダクト戦略を担当することになった。出典

  17. AIリテラシーの実践がEUのLiving Repositoryに掲載された。出典

  18. GTM Alignment Gap Indexを発表。85%のチームが定常的な認識齟齬を報告した。出典

  19. Omar AyubがCTOに就任し、AIを含む技術戦略を統括することになった。出典

  20. 累計調達額 更新出典

    • 調達 $200,000,000

ポジショニング

分析で挙げた競合プロダクトとの相対位置を示しています。

エンタープライズ向けの統制機能と手法・研修を併せて提供する高価格帯のプラットフォーム型。汎用ホワイトボードより提供範囲が広い。

参考リンク

関連プロダクト

AI Meeting Notes

tl;dv

tl;dvは、Zoom・Google Meet・Microsoft Teamsの会議を録画・文字起こしし、AIノート、CRM更新、フォローメールの下書きまで自動化するドイツ発の会議インテリジェンス製品。2020年にアーヘンで3人が創業し、2026年時点で300万人以上が利用する。単発の要約ではなく、複数会議をまたいだ検索と分析を得意とする。

DE · 2020 年 · 出典 24

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Onlookは、デザイナーが本番のReactコードベースをそのまま編集できるオープンソースのビジュアルエディタ。2024年7月にHacker Newsで1位になり、GitHubスターは2万7千近くまで積み上がった。2026年は、Mac上で動くデスクトップアプリとして、Claude CodeやChatGPTと並走しながら実コードを直接いじる形に軸足を移している。

US · 2024 年 · 出典 19

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Tella

Tellaは、画面録画と動画編集をひとつのブラウザ画面にまとめたツールです。オランダ・アムステルダムを拠点に、Y Combinator Summer 2020から7人のチームで運営されています。録画した素材を別の編集ソフトへ渡すのではなく、文字起こしの削除から共有ページの発行までを同じ場所で終わらせる設計で、2026年にはAIエージェントから動画を編集するMCPサーバーも全プランに載せました。

Netherlands · 2020 年 · 出典 11

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AI Workflow

Tray.ai

Tray.aiは、2012年創業のiPaaSがAIエージェント時代に合わせて姿を変えた例です。700以上のコネクタと監査・権限管理を土台に、MCPゲートウェイ、no-codeのagent builder、AIが作ったアプリを本番で動かすruntimeまでを1つの契約にまとめています。買収・調達・アナリスト評価の時系列から、iPaaSが「つなぐ道具」から「AIを統治する層」へ移った理由を追います。

United States · 2012 年 · 出典 18

#MCP#動画マーケティング#AI